冬になると加湿器売り場に人が増えます。赤ちゃんがいる家庭、乾燥肌に悩む人、喉を痛めやすい人。目的はさまざまですが、店頭に並ぶ機種を見て「結局どれを選べばいいのか分からない」という声をよく聞きます。実際、加湿器には仕組みの違う4つのタイプがあり、それぞれ得意な場面が違います。ここでは寝室に置く加湿器を選ぶ、という場面を軸に、タイプごとの違いを見ていきます。
寝室で使うなら、まず「静かさ」と「衛生」で絞り込む
寝室用に加湿器を選ぶなら、加湿量の大きさよりも先に、運転音と衛生管理のしやすさを基準にするべきです。寝ている間ずっと動かす機器なので、音が気になると眠りが浅くなりますし、水を使う機器である以上、手入れを怠ると雑菌をまき散らす道具に変わってしまうからです。
加湿器は水を空気中に放出する装置です。放出の方法によって、音の大きさも、タンク内の水の状態も変わります。振動で水を霧状にする方式は静かですが水そのものを撒くため、水が汚れていればそのまま部屋に広がります。熱で蒸気を作る方式は殺菌効果がありますが、モーター音や沸騰音が出ます。この根本的な違いが、寝室向きかどうかを分けます。
たとえば生後8か月の子どもがいる寝室で、夜中の授乳のたびに加湿器の音で目が覚めてしまう、という相談はよくあります。逆に、静音性だけで選んだ結果、1週間掃除を忘れてタンクにぬめりが出ていた、というケースも珍しくありません。静かさと衛生は、どちらか一方では成立しない組み合わせです。
ただし、リビングなど日中しか使わない部屋であれば、音の優先度は下がります。人がいる時間帯は多少の運転音も気になりにくいので、この場合は加湿力や電気代のほうを重視して選んでも問題ありません。
スチーム式は、衛生面で選ぶなら第一候補になる
雑菌の繁殖を気にする家庭では、スチーム式がもっとも安心できる選択になります。水を加熱してから蒸気にするため、タンク内の雑菌ごと放出されにくいという特徴があるからです。
仕組みはシンプルです。ヒーターで水を沸騰させ、発生した蒸気を部屋に送り出します。加熱の過程でタンク内の水温が上がるので、雑菌が増殖しにくい環境になります。加湿量も比較的大きく、乾燥がひどい部屋でもすぐに湿度が上がります。
共働きで日中は換気扇を回しっぱなし、夜だけ加湿器をつけるという家庭では、帰宅して30分ほどでリビングの湿度計が40%台から55%まで上がった、という例があります。即効性を求める場面ではスチーム式が強みを発揮します。
一方で、電気代はほかの方式より高くなりがちです。ヒーターで水を沸かし続けるため、長時間つけっぱなしにする使い方には向きません。また、蒸気の吹き出し口が熱くなる機種が多く、小さな子どもがいる家庭では設置場所に注意が必要です。手の届かない棚の上に置くなど、工夫が求められます。
気化式は、電気代を抑えたい人向けだが加湿力に限界がある
電気代を気にする家庭には気化式が向いています。ヒーターを使わず、フィルターに含ませた水に風を当てて自然に蒸発させる仕組みなので、消費電力がほかの方式よりかなり小さく済むからです。
仕組みを追うと、なぜ電気代が安いかが分かります。水を加熱する工程がないため、モーターがファンを回す分の電力しか使いません。その代わり、蒸発の速度は自然任せなので、加湿できる量には上限があります。部屋の広さに対して機種の能力が足りないと、湿度がなかなか上がりません。
木造の和室6畳で気化式を使ったところ、外気温が氷点下まで下がる夜には湿度が50%までしか届かなかった、という声があります。同じ部屋でスチーム式に替えると60%を超えたそうです。部屋の断熱性や広さによって、気化式だけでは物足りない場合があるということです。
ここは迷うところですが、気化式は加湿と同時に送風もするため、体感としては涼しく感じやすい機種でもあります。夏場のエアコンとの併用や、乾燥がそれほど厳しくない地域では十分に力を発揮します。フィルターの定期交換を怠ると加湿力がさらに落ちる点も覚えておく必要があります。
超音波式は手軽だが、水の管理が結果を左右する
価格の安さと静音性を優先するなら超音波式が候補になりますが、水の管理を怠ると本来の利点が裏目に出るタイプでもあります。振動板を高速で振動させて水を微細な粒子にして放出する仕組みのため、モーター音がほとんどせず、価格も比較的抑えられています。
ここで重要なのは、加熱工程がないという点です。スチーム式のように熱で殺菌されることがないため、タンクの水がそのまま霧になって部屋に広がります。水を毎日replaceせず、タンクの手入れも週1回程度で済ませてしまうと、雑菌が増えた状態の水を吸い込むことになりかねません。
寝室に置いた超音波式加湿器を2週間ノーメンテナンスで使い続け、白い粉のようなものが家具に付着したという相談があります。これは水道水中のミネラル分が水と一緒に放出されて析出したもので、体に害があるとは限りませんが、掃除の手間が増える原因になります。毎日の給水時にタンクをすすぐ、という習慣があるかどうかで満足度が大きく変わるタイプです。
加湿量自体は機種によって差が大きく、小型のものは寝室の1畳分程度しか潤せないこともあります。価格の安さだけで選ぶと、部屋の広さに合わず物足りなさを感じる場合があるので、対応畳数の表示は必ず確認してください。
ハイブリッド式は、迷ったときの折衷案として機能する
どのタイプも一長一短で決めきれない、という場合はハイブリッド式が現実的な落としどころになります。気化式の省エネ性とスチーム式に近い加湿力を組み合わせた仕組みで、両方の弱点をある程度打ち消し合う構造になっているからです。
多くのハイブリッド式は、フィルターに水を含ませて風を当てる気化の工程に、温風を加える仕組みを採用しています。温風によって蒸発量が増えるため、気化式単体より加湿のスピードが速くなります。ヒーターは使いますが常時全力で加熱するわけではないので、スチーム式ほど電気代がかさみません。
マンションの14畳リビングで、朝の出社前に加湿器をつけてから戻る夜まで湿度を50%前後に保ちたい、という使い方にはこのタイプが向いています。気化式では立ち上がりが遅く、スチーム式では日中の電気代が気になる、という両方の悩みを同時に解消できる場面です。
ただし、構造が複雑な分、本体価格は4タイプの中でもっとも高くなりやすく、フィルターとタンクの両方を手入れする必要があるため、掃除の手間そのものが減るわけではありません。安さや手軽さを最優先する人には、かえって扱いにくく感じられることもあります。予算と手入れの手間、どちらも許容できる場合に選ぶタイプだと考えておくとよいでしょう。

